11/2〜5の期間、神戸にてSIGGRAPH ASIA 2015が開催されました。
私たちPREVIS SOCIETY ASIAは、SIGGRAPHの公式セッションとして「アジアにおけるプリビズの活用」という内容でパネルディスカッションを開催、また、展示会場ではプリビズに活用出来るツールを紹介するブースを展開しました。
多くの方々にお越し頂き、非常に有意義なイベントとなりました。ありがとうございました。


メインイベントであるパネルディスカッションは4日の16:30に開催されました。
今回、日本、台湾、韓国、中国、米国のプリビズ関係者が集結し、各国のプリビズ事情など非常に貴重な話が聞ける機会となりました。
Education Panel in "Symposium on Education"
PreVisualization: How to Develop PreVis in Asia?
11/4 16:30-18:00
神戸国際会議場 2号館 2階 2A会議室
Satoshi YamaguchiACW-DEEPJAPAN
Christopher ChenReallusionTAIWAN
Danyo YoonPretzealKOREA
Gavin BoyleBaseFXCHINA
Daniel GregoireHALON EntertainmentUSA
セッションは英語で行われましたので、以下にその概要を記します。
ご参考にしていただければと思います。

1) Introduction
代表である山口より、PREVIS SOCIETY ASIAの設立意義を説明(内容については本サイトに記されている趣旨説明をご参照ください)。 また、本セッションの内容についての説明を行いました。
2) Presentation
各パネリストからそれぞれの国で取り組んでいる事業についてプレゼンが行われました。
(1) 山口 聡 (株式会社ACW-DEEP(日本))
担当してきたプリビズ作業について紹介しながら、日本でのプレビズの現状が説明されました。
日本の映像制作は特殊な文化をもっていて、担当者が自分の持ち場について非常に大きな責任担っています。それが集まったものが「組」と呼ばれる制作組織なのですが、短期間で優れた作品を生み出す機動力がある反面、新しい技術に対してのチャレンジがされにくいという欠点もあります。プリビズは様々な部門に影響を与えるプロセスなので、なかなか受け入れられません。
最近よく見られる非常に良くできたプリビズ映像も日本では受け入れられないことが多いです。プリビズでチェックしなければならない画郭やタイミングよりも、アニメーションが気になってしまい、そちらに気を取られてしまうのです。照明やセットなども同じで、作り込むとそちらが気になって本来の役目を果たさなくなってしまいます。そのため、私が作るプリビズは非常に簡易化されたモデルなどを使い、本来の目的を達するように考慮しています。こういうことは日本独特の文化なのかもしれません。
アジアは日本と同じで独特の文化を持っている国が多いと思います。ハリウッドスタイルのプリビズ作業をそのまま割り当てるのでなく、その国それぞれのやり方に合うようにやっていくことが、プリビズの普及には重要なのではないかと考えています。
(2) Christopher Chen (Reallusion(台湾))
台湾で行っているプリビズ教育実践について説明されました。
Reallusion社では、毎年、学生向けの大会として、CGソフトウェア「iClone」を使用して48時間でテーマに沿った作品を作るコンテストを開催しています。優勝賞金はなんと$10,000!48時間という限られた時間の中で、シナリオ制作から始めて作品を完成させることは非常に難しいことですが、毎年レベルは向上しています。第三回になる今年のコンテストで優勝したマレーシアのチームの作品は非常に優れたものでした。(コンテスト作品はReallusion社のサイト(http://www.reallusion.com/event/15-asiagraph/)から見ることができます)
このコンテストの背景には、プリビズの教育ということがあります。iCloneにはモデルやアニメーションなどのアセットが揃っているので、ストーリーがうまくできれば作品を完成させることができる。つまり、映像制作の要である「ストーリーをつくる」ということを学ぶことができるのです。
現在、台湾だけでなく、中国でもiCloneを使った教育が進められています。インドネシアでも3日間の体験コースを行いました。今後もこういった取り組みを進めていき、プリビズができる人材を見出していきたいと考えています。
(3) Danyo Yoon (Pretzeal(韓国))
韓国でプレビズ事業を立ち上げるにいたった経緯が説明されました。
大学ではグラフィックデザインを学んでいましたが、映画の仕事をしたいと思うようになり、CGを使った映像を作成するなどして映画業界にアプローチしていきました。特にストーリーテリングに関連する仕事への興味があり、そういう方向でやっていくうちにプリビズに出会ったのです。当初はプリビズが何であるかも理解していませんでしたが、限られた時間と資金の中でストーリーテリングに関われるというプロセスが面白く魅力的でした。また、自分のCG作成能力やスキルも役立ちました。ニュージーランドのWETAや韓国国内のCG制作会社などで経験を積み、昨年、韓国でPretzealを立ち上げたわけです。
プリビズは頭の中にあるアイデアを限られた時間でストーリーにしていくユニークな手法だと思います。また、製作陣にそのシーンを作るのにどの程度予算が必要なのかを説明するにも重要なツールです。より高いクオリティでの映像制作のため、プリビズを活用していきたいと考えています。
(4) Gavin Boyle (BaseFX(中国))
中国におけるプリビズビジネスへの参入経験について話されました。
私が中国に来たのは、『モンスターハント』というライブアクションとアニメーションが一体となった作品の制作で呼ばれたのが始まりです。プリビズをやってほしいということで呼ばれましたが、その当時は中国にはプリビズをやっている会社はなく、誰も何をすべきかを理解していませんでした。
まず、この映画製作にどの程度のお金がかかり、どの程度コストをカットする必要があるかを示す必要がありました。映画全編の60-70%にあたる長さのプリビズを製作。アメリカの映画製作ほど予算が潤沢でなく、タイトな中国での映画製作には有効でありました。
プリビズを理解するスタッフが中国にはいなかったのでアニメーターをスタッフとして採用。少なくともそういった才能が最低条件でしたが、実践的な能力を持ち合わせていればトレーニングで育てることは十分可能です。プリビズを進めるにあたっては監督との共同作業をすることに気を配りました。また、プロダクションデザイナーとの関係も重要でした。プリビズがプリプロダクションで信頼できる工程であることを認識してもらうため、予算が許す範囲内でドローンなども使用し、監督がほしいものを与えることにプライオリティを置きました。
今後のプリビズの展開においては、映画ビジネスにおいてプリビズ部門を持つことの価値を認めてもらうことが大事だと考えています。中国においてもこのパネルメンバーが認められるようになっていくように活動を進めたいと思います。
(5) Daniel Gregoire (HALON Entertainment(米国))
ハリウッドでのプリビズ先駆者としてどのような場面でプリビズを使ってきたか、そして企画やストーリー展開、シーン開発、撮影の方向性決定、オン・セットでの対応、ポストビジュアライゼーションなど、多様なプリビズの使い方が実例をあげて紹介されました。
プリビズ制作はコンピュータ上のCGソフトだけでつくられるものと考えられることが多いですが、コンピュータはすべての要求には対応できません。やっているのは人間であり、コンピュータのような計算だけで動くものではないからです。そのため、最近のプリビズ制作にはライブアクションとの組み合わせが重要であり、ドローンやバーチャルカメラなどのハードウェアも使用しています。
プリビズの最も大きなメリットは、制作スタッフの全員が映像を見ることによって「同じページ」を認識できること、つまりあるシーンを構成する上でベストなバージョンはどれかということがはっきりとわかることです。当然ながら、予算は障害の一つになります。ベストなバージョンがどんなにすばらしくても予算オーバーではつくれません。監督と共同で作業し、このプロジェクトがどれくらいのコストでつくることができるのかということを示すことによって、プロジェクト自体を「売れるもの」にしていくことができます。それが非常に大事なのです。
また、映画制作にはアクシデントがつきものです。やってるそばから要求されるものが日々コロコロと変わっていきます。撮影現場でもそれは毎日発生するので、オンセットでの制作進捗による変更にプリビズを対応させていくことも重要でしょう。
3) Panel Discussion
今回のセッションのテーマである「アジアにおけるプリビズの活用」のため、各パネリストの方々より、どうすればアジアでプリビズを普及させることができるのか、どう教育していけばいいのか、意見を述べていただきました。

まずは、中国でプリビズを進めておられるGavinさんから、中国での苦労を踏まえて話していただきました。

中国ではプリビズを映像教育に組み入れた学校は存在しません。アニメーションの教育は行っていますけど。そのためプリビズの才能を見出すのは非常に大変で、その時点で使用できる人材をピックアップして使っていくしかありませんでした。
私のチームはそういったメンバー5-6人から構成されていました。能力面でまだ限られたメンバーでスピード感を持ちプロジェクトを進めていくにはクライアントや監督から情報を収集し、そのつどメンバーに説明して経験させる中で理解させていくしかありませんでしたね。
プリビズ教育していくにあたっては、どのようにメンバーと情報をシェアしてトレーニングしていくかが重要と考えています。

次にDanyoさんに韓国でプリビズを立ち上げた経験や苦労を語っていただきました。

韓国ではポストプロダクションとしてVFXをやる会社はあったし、いくつかのCGI会社にてプリプロダクションを実施している事例はありました。しかし、本格的にプリビズをやっているところはありませんでした。
しかし、最近は韓国においてもカーチェイスシーンやキャラクターの設定において『VFXの完成形がどう見えるのか』ということを見せる必要が出てきました。また、プリビズによってその主な目的でもある『どのようにVFXを使ってストーリーテリングやシーン作りが効果的にできるか?』という面を説明することで製作側もその効果に興味をもつようになってきています。製作スタッフもプリビズが非常に有効であるということが理解されてきています。
プリビズアーチストがストーリーテリングに興味がなかったり、プリビズに効果があるということを示せないのでは、プリビズの展開もうまく進まないと思います。

Danielさんはハリウッドでプリビズを展開して経験がおありです。その経験がアジアにおいてのプリビズ展開に役立つと思いますので、その辺り聞いてみました。

通常、2年はかかる映画製作において、9か月という短期での完成を求められたことがあります。2か月のプリプロダクション期間でプリビズを作り上げ、監督の求める映像を提供し、監督がそれに沿った映像を作ることで何とか間に合うことができました。認知度をあげてもらうには監督やプロデューサーが求めるものに対して、都度ベストな結果を提供していくことが第一ステップだと思います。監督や製作スタッフが困っていることに対して『解決策』を提案できるようにいつでも『準備ができた』状態であることが重要です。とにかくまずは製作陣にプリビズが『信用』を得ることですね。

最後にChristopherさんに教育の面から同の章に進めるのが良いか話していただきました。

やはり若い世代の学生をプリビズアーチストとして育てていくことが重要だと考えています。
今後は次の二つをテーマに次世代育成に貢献していきたいと思います。ひとつは学生たちの参考となるような活動でリードしていくこと、もう一つはコンテストの継続による能力の発掘です。近々新しいコンテストも実施予定です。

アジアにおけるプリビズ活用はまだ始まったばかりです。PREVIS SOCIETY ASIAでは、今後も引き続き、教育ということをテーマに考えていきたいと思っています。
4) Q & A
残念ながら時間の都合により割愛となりました。ご質問はPREVIS SOCIETY ASIAのインフォメーションまでメールにてお問い合わせください。
PREVIS SOCIETY ASIA インフォメーション窓口 : info_psa@previssocietyasia.org


今年7月に設立したPREVIS SOCIETY ASIAとして今回が初のイベントとなりましたが、多くの方にご参加いただき、プリビズへの関心の高さを感じました。
今回のようなセミナー等のイベントを通じ、アジアの国々で協力する体制を作り上げ、プレビズの活用を促進し、映像制作のクオリティ向上に貢献していきたいと考えております。
皆様のご協力をお願いいたします。


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